| 8.桎梏 |
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この東トルキスタン共和国が崩壊してから、すでに半世紀以上が経過した。しかし、時間と運動の形態を超越しても、この運動の現在に与えた影響ははかりしれない。東トルキスタンの民族独立運動は、現在のウイグル民族の歴史を貫く太い糸のような存在であり、現代中国にとってきわめて厄介な桎梏となって立ちはだかっているのである。 新疆には数十万の人民解放軍が駐屯している。そのほかに、即座に軍隊組織として編成される数十万の生産建設兵団がいる。司法・行政・文化・教育などありとあらゆる諸民族支配の法の網がかぶせられており、中国共産党の支配の構造は、いささかの揺るぎも見せない。 しかし、“民族の自治と独立”の声は、新疆・チベット・モンゴル諸民族の胸に深く刻まれており、欧米各国のチベットの「ダライ・ラマ支持決議」のように世界各国の世論は彼らを支持している。国際情勢は確実に変化しており、21世紀初頭にはこの問題におけるドラスティックな変化が起こることが予測される。 現代中国の民族問題をめぐる国際政治を見るうえで、この東トルキスタン共和国の樹立と崩壊を正しく認識・評価することは、多民族国家中国に組み込まれたトルコ系諸民族を理解し、21世紀の中国の未来像を把握する上で、大きな価値があるものと思われる。 【参考文献】 『東トルキスタン共和国研究』中国のイスラムと民族問題 王柯著 1995年初版 東京大学出版会刊 『研究誌 季刊中国』1998年冬号「シルクロード―中国・西域の歴史と少数民族」 野口信彦著 日中友好協会刊 同2000年冬号「イスラム教の動向と中国の民族問題」 野口信彦著 日中友好協会刊 この小論は、2001年に執筆したものです―筆者 |
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