今回は中国・新疆のイスラム系民族のうち、800万人の人口を持ち、最大の民族であるウイグル系民族の風俗・習慣や宗教生活などをご紹介しましょう。

 ウイグル族は家庭における子どもの躾(しつけ)をことのほか大事にします。子どもの不行跡は親の責任とされ、子が親に尽くすことが何にもまして大切だとされています。家族の行いはすべて父の教えに従い、父が亡くなった場合は、長男または母が決めることになっています。

 イスラームの戒律や習慣も厳しいものがあります。例えば、食事やお茶を出すときは、まず年上の男性が先です。多くの場合、レストランなどでテーブルに座るときも男女別々のテーブルか、それぞれが固まって座るほどです。食事も目上の人が先に箸をつけるまでは食べません。お酒も目上の人から進められないと飲みません。

 このような上下と男女の関係は絶対であり、社会的な立場と存在と年齢がすべての関係を律しています。今でも親の決めた見合い結婚が主流を占めていますが、恋愛結婚も増えています。愛情表現も日本の若者のように、互いに腰に手をまわしながら歩いたり、駅の改札口付近でいつまでも抱きあっていたりするなどは想像もできないことです。

 家族以外の女性の身体に触れることはもちろん、握手もダメです。ジロジロと女性を見ることも男性の非礼とうつります。私が仲間たちと登山などで新疆に行くときには、このことを事前に何度も注意するのですが、なかには、善意か女性のからだの一部にでも触れたいという不純な動機からか、強引に握手を求めたり、顔をじろじろ見て「きれいですネ」などといって女性の側が恐慌を来たす場面がよくあります。しかし、都会では国際化がある程度進んでおり、時折、男女の握手シーンがあるようです。

 異民族同士の結婚はほとんどありません。というのは、その民族の人たちの言う言葉ですが、恋愛をして結婚寸前まで行く例はかなりありますが、いざ結婚となると、互いの親の反対、豚肉を絶対に食べない習慣、イスラームに改宗しなければ結婚が許されないという、厳然とした宗教の壁に阻まれているのが実際のところです。逆にウイグル族などが各段階の党や政府の幹部になると、豚肉を食べる人もいるという話をよく聞きます。豚肉を食べないというのは、クルアーン(コーラン)の戒律ですが、たとえば、食べるものがなくなって生きるためには、豚肉を食べることが許されています。

 乗り物に乗る場合も男性が先、あらゆる場面で男性が優先され、男女の差が明確で、男性支配・男尊女卑が厳しくそして根強く残っています。さらに靴やズボンを履くときは右足から、上着やシャツを着るときも右手から、とイスラームの戒律が色濃く残っています。

 そういえば、最近、日に5回の礼拝を欠かさない20〜30歳代の若い人が増えてきました。タバコを吸わなくなり、酒も飲まなくなっています。9・11テロの影響でイスラム原理主義が入ってきているからです。3度の食事は必ず家族一緒。夕食後は家族で踊ったり唄ったりの団欒があり、日本のような父親の深夜残業や過労死とは無縁です。月に一度は一家全員が友人たちとレストランで食事をしたり、歌い踊る時間などをとても大切にしています。
 
 子どもはテレビを見たり宿題などもきちんとやります。子どものしつけは祖父・祖母の役割にもなっています。

  政治、経済、文化の中心であるウルムチなどの都会と地方の生活レベルの違いは大きく、大学に入学する率は都会のほうがはるかに高いのが実情です。

 このような少数民族への同化政策や民族間の格差の増大などが分離・独立運動を誘発させる一因になっているのかもしれません。

 独特のイスラム文化を継承
 
 ウイグル族の家庭では、3度の食事は必ず家族一緒。夕食後は家族で踊ったり歌ったりの団らんがあり、日本のような父親の深夜残業や過労死とは無縁です。月に一度は一家全員が友人たちとレストランで食事をしたり、歌い踊る時間などをとても大切にしています。でも農村地域ではなかなかそうはいきません。

 男の子はしゃべり始めると歌を唄いだし、女の子は歩き始めると踊りだすというのがウイグル族です。子どもはテレビも見ますが、宿題などもきちんとやります。子どものしつけは祖父・祖母の役割にもなっています。

 ウイグル族は、家族であってもお母さんが病気のときの看病は、まず夫が、そして女性である娘や叔母が見て、お父さんの看病は奥さんの次には息子や叔父が見ます。シャワーやトイレなどへの往復では、娘はお父さんには近寄らず、息子はお母さんや姉妹に近寄りません。とにかく、家族でも、異性の上半身はあまり見ない、見せないのがマナーになっています。

 家族や同じ民族間ではウイグル語で話しますが、職場や地域社会では漢語(中国語)を話すこともあります。なぜなら、学校の授業や進学試験、入学試験や就職試験など漢語使用が多いからです。ですから多くの少数民族はほとんどがバイリンガルです。そうしなければ新疆という社会で生きていけないからです。

 政治、経済、文化の中心であるウルムチなどの都会と地方の生活レベルの違いは大きく、大学に入学する率は都会のほうがはるかに高いのが実情です。

 新疆は鉱物資源が豊富ですが、あるとき、新疆ウイグル自治区人民代表大会で、あるウイグル人代表が、「新疆で採掘される石油のせめて5%を新疆のために使えないものだろうか」と発言したら、その日のうちにクビになったという話があります。「選挙」で選ばれたはずの議員が、です。

 このような少数民族への同化政策や民族間の格差の拡大などが、分離・独立運動を誘発させる一因になっているのかもしれません。

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