日本シルクロード文化センター主催
シルクロード講座とシルクロードサロン
第21回:2011年4月9日(土)13:00〜16:00
シルクロード講座:
「トルファンの綱渡りを取材して」
          講師:藤本将太さん(日本電波ニュース社ディレクター)
特別講座:
「福島原発災害を考える」
          講師:柳町秀一さん(原発問題住民運動全国連絡センター事務局長)
場所=「みんなの広場」(小田急線和泉多摩川駅から歩いて5分)

第21回の様子(報告:周東)

4月9日(土)23名の参加で第21回のシルクロード講座&サロンが開かれました。東日本大震災の被害の大きさに加えて、福島原発災害で放射能漏れが深刻な影響を及ぼしてきている中、サロンの代わりに特別講座として住民の立場から世界各国の原発事故を調査してきた柳町さんに、福島原発災害についてお話しいただきました。

様子 「トルファンの綱渡りを取材して」は、NHKテレビで放映されたアジアンスマイル「天空の王子綱に舞う」の制作者藤本さんに、新疆ウイグル自治区トルファンで綱渡りに打ち込む青年を取材したときの話を伺いました。藤本さんは、ペシャワール会の中村哲さんの用水路作りの取材から戻られ、その足で東日本大震災の取材と忙しい取材活動の中での参加でした。
参考 NHK過去の放送 アジアンスマイル「天空の王子綱に舞う」

綱渡り(ダワズ)は古くからラマダン明けの祭などの儀式で行われていたもので、命綱をつけずに地上20mの綱の上で演じる妙技は、命がけの仕事で英雄として尊敬されています。文化大革命時に禁止されたこともあり、この技を伝えるのは番組の主人公サーマディの一族だけになってしまったそうです。ウイグルの暴動以後集会が禁止されたり、広場の使用料を支払わなければならなくなったため、現在は中国各地を回ってレストランでのショーなどに出演しながら伝統を守っているそうです。

取材では、1日いくらか政府に払わなければならず、宿泊も5つ星ホテルでないとダメ、日程は10日間など制限があり、役人がついて回るのが普通だが、コーディネータがうまくとりはからて役人が来るのは防げたこと、言葉の問題では日本語ー中国語ーウイグル語ー中国語ー日本語のやりとりでは、本当のところが伝わらない、など放送されなかった取材テープを見ながら苦労話も伺いました。今後の目標として「ウイグル人自身が語る歴史」を取材してみたいということでした。

様子特別講座は、皆が知りたがっている「原発事故で本当は何が起っているのか、その危険性はどうなのか」という疑問に答えてもらうものでした。

・国際原子力機関(IAEA)の国際原子力安全諮問委員会(INSAG)が、米TMI原発事故、旧ソ連チェルノブイリ原発事故の教訓をまためた「原子力発電所のための基本安全原則(INSAG―3)」の国際的提起に対して、日本が反対し、国内実施を拒否してきた。 『経済』2006年8月号掲載論文参照

・福島原発が地震・津波時に炉心の崩壊熱の除去ができなくなり、苛酷事故(シビアアクシデント)に至る危険があることは、住民運動が繰り返し指摘してきたが、東京電力は一貫してこの指摘を無視してきた。「日本では苛酷事故は起こりえない」とまで言い切って、その備えを怠ってきた。

・福島原発に限らず、軽水炉は、原理的に、核分裂連鎖反応が暴走する反応度事故と崩壊熱の除去ができなくなる冷却材喪失事故の危険性をもっている。日本の原発はすべてこの危険性をもっている。

・戦後すぐの福井地震が前の地殻変動活動期の最後で、神戸の地震から、また活動期に入った。コンビナートなどの近代構造物はこの間に建てられた。大地震に対する備え、耐震安全評価はきちんとなされてきたか?

・福島原発震災でその危険が顕在化した。住民運動にとっては無念の極みだが、国と電力会社にはこの顕在化のすべてに責任がある。遅すぎるが、専門家、技術者、作業者の英知を集めて、まず事故対策に万全を期せ!『前衛』2011年5月号掲載論文参照

参加者からもいろいろ質問が出され、場所を移しての懇親会の席でも続いていました。

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