日中友好新聞連載シリーズーシルクロードの光と影
第 16 回
中央ユーラシア大陸の要衝トルファン・ハミ文化圏
トルファン・コムル(ハミ)地域には、セランド=西域でも有数の高昌故城、交河故城、ベゼクリク千仏洞などの仏教遺跡が数多くあり、十二ムカームがこのほど最終的に整備されたといわれています。

トルファン・コムル(ハミ)地域は、セランド=西域独自の様式が生まれた場所です。

2世紀頃、インドからホータンに伝わった仏教文化は、6世紀頃にはクラマカン沙漠を越え、トルファン地域に広がり、世界に注目される豊かな仏教美術・仏教文化が咲き誇りました

このオアシスは、仏教文化が栄えたはるか昔からシルクロード交易の要衝でしたが、14世紀になって、400年間にわたった宗教戦争を経てイスラームに改宗しました。

総面積6・7万平方kmあるこのオアシスの北域には火焔山が走り、南域には世界第2位の海抜マイナス154mのアイディン湖があります。この地域はきわめて乾燥しており、夏には50度にまで達します。私は54度を体験しました。

さらにトルファンは天山山脈のふもとにあり、数千年の歴史を持つカレーズ(地下水路)があります。カレーズは天山の雪解け水をオアシスに導く渠であり、穀物、葡萄、綿花など多様な収穫を得る地下水源です。毎年、夏には「ぶどう祭り」が市内全域で行われます。

トルファン近郊の吐峪溝には以前からチベット仏教の象徴であるタルチョーが高々と掲げられています。そのタルチョーは千キロも離れたホータンのマザール(お墓)でもやはり掲げられていたのです。多くの巡礼者やトルファンの管理者はそれが仏教のものだとは知らないで礼拝しているのです。しかし、私が話を聞いた古老はそれが仏教のものだと知っていました。そして古老が私に言いました。「ワシはそのことには触れない。だからあなたもそれ以上いうべきでない!」と。

吐峪溝には、手つかずの絢爛たる仏教芸術が咲き誇る千仏堂の石窟があります。07年3月、私はウズベキスタンでの旅の途中、ある楽器を見ましたが、ハミでも同じような楽器がありました。それが漢土では「二胡」になったのです。中央ユーラシアを起源とする楽器が二胡として、中国でも日本でも普及していたのです

さらに、ハミの古老が私に言いました。
「今から千年前、ムハンマド・カシュガリーは日本を研究し、大陸の東端に『JAPAN=ヤポン』という国があるといった。だから将来、日本人がわれわれ西域人を研究するはずだといった。その人があなたではないのか」と。
「いえいえ、とんでもありません」と私は答えました。トルファン・ハミと日本は意外なところでつながりがあったのです。

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