日中友好新聞連載シリーズーシルクロードの光と影
第 21 回
日本とシルクロード(3) スフィンクスと狛犬
「スフィンクス」(Sphinx)は、エジプト神話やギリシア神話、メソポタミア神話などに登場します。ライオンの身体と人間の顔を持った神聖な存在あるいは怪物で、漢字では「獅子女」と書きます。古代のギリシア語ではスピンクスといい、スフィンクスは、その英語読みです。

エジプトのスフィンクスは王家のシンボルです。ギザのピラミッドの前にあるスフィンクスは、王の偉大さをあらわす神聖な存在です。対してメソポタミアやギリシアのスフィンクスは女性化され、怪物として扱われたようです。

近年の研究では、このスフィンクスはピラミッドよりも200年ほど古くから存在していることが判明しています。

エジプトの首都カイロにあるギザの大ピラミッドを守るかのように鎮座しているのが、このスフィンクスです。

このライオンがシルクロードの中央アジアを通って中国では「麒麟(キリン)」あるいは龍(ドラゴン)となり、朝鮮半島・高句麗の影響を受けながら日本に伝来したのが狛犬です。狛犬はもともと龍を表していましたが、なぜか途中で犬になったようです。

私は東京の狛江市に住んでいますが、ここも昔は朝鮮半島の高麗からの渡来人が移り住んでいたといわれています。埼玉県の西武線沿線にある高麗(こま)も同じです。

東大寺の南大門には運慶と快慶による仁王様の威容に接することができます。仁王に背を向けた場所に日本最古の狛犬(石獅子)が並んでいます。私の若いころのニックネームが「仁王」でしたので、親近感を覚えます。

1180年に平重衡(しげひら)の焼き討ちにあった東大寺は、名僧・重源によって再建されました。そのとき中国の宋から渡来した4人の石工(せっく)が、宋から運んだ石材で作ったのがこの獅子です。台座の浮き彫りのギリシア蓮華文様や牡丹の花なども美しいものです。

日本の各地にある神社に鎮座している狛犬の起源は、シルクロードを通ってエジプトのスフィンクスにまでさかのぼれるのです。

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