日中友好新聞連載シリーズーシルクロードの光と影
第 24 回
 日本とシルクロード(6) ギリシアが奈良にやってきた
薬 師 寺

奈良・薬師寺にある薬師如来坐像の台座は、レプリカながら光り輝く金堂に鎮座しています。薬師如来像が座っている台座には、奈良時代にシルクロードを経由してきた世界各地の文様が刻まれています。

薬師寺台座上段の框には、ギリシアの「葡萄唐草文様」が描かれており、その下には「ペルシアの蓮華文様」、四面の中央にはインドから伝わった「力神の裸像」が浮き彫りにされています。

下框には中国の四方四神=東に青龍、南に朱雀、西に白虎、北に玄武が彫刻されています。

この台座には、当時の国際的な関係と東西文明の交流を知る上でも貴重なものがあります。奈良がシルクロードの一方の位置にあるといわれるゆえんが、この台座からも理解できます。

アレクサンドロス大王を葬ったと伝えられる巨大な石棺にも唐草文様が刻まれていますが、唐招提寺にも同じギリシア文明が発した文様が輝いているのです。

法隆寺の至宝

法隆寺は飛鳥時代の姿を現代に伝える世界最古の木造建築として余りにも有名です。その創建の由来は「金堂」の東の間に安置されている「薬師如来像」の光背銘や「法隆寺伽藍縁起並流記財帳」(747年)の縁起文によって知ることができます。

中門および廻廊には、ギリシア文明の影響で柱の中間がふっくらと丸みをおびた「エンタシスの柱」があります。

さらに、法隆寺の本尊を安置する殿堂が金堂で、この中には聖徳太子のために造られたといわれる金銅釈迦三尊像(飛鳥時代)、聖徳太子の父の用明天皇のために造られたという金銅薬師如来座像(飛鳥時代)、母の穴穂部人皇后のために造られたという金銅阿弥陀如来座像(鎌倉時代)などが安置されています。

私の訪問の目的は、金堂の天井にある「天人」いわゆるセランド(西域)のクチャやトルファンあるいは敦煌などの壁画に描かれている飛天の現認でした。鳳凰が飛び交うセランド色豊かな天蓋が吊るされ、周囲の壁面には世界的に有名な飛天の壁画(昭和24年焼損、現在はパネルに描かれた再現壁画がはめ込まれています)が描かれ、創建当時の美しさが、わずかでしたがしのばれました。

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